フランス地方菓子紀行(4)西部編

1998年8月23日(月)<サン・マロ〜カンカル〜サン・マロ>

目覚めてみればブルターニュの北の東端、陸地から突き出したサン・マロSt.Maloという海港城壁都市にいる。ホテルはグランド・ポルト(大門)をくぐってすぐの城壁内にある。9:00にホテルを出発し、エメラルド海岸のカンカルCancaleという街にある2ツ星レストラン「Maisons de Bricourt:メゾン・ド・ブリクール」へ向かう。バスで50分ほど。ここで料理研修をさせて頂くのである。噂によると、こちらのシェフはデモをなさるのは始めてとか。張り切って下さっているらしい。早目に着いてしまったようで、まだ、スタッフが揃っていないようだ。時間潰しに門の辺りで写真を撮ったりメニューをチェックしたりしていると、とことことシェフが歩いて店に入っていく。なんかのどかで良い。講習はまずシェフのお話から。中庭に案内され、水鳥が泳ぐ池のほとりで話し始める。自分はケルト人であり、その文化を大切にしている。ケルト人はチーズ、きのこを食べない。カキはブルターニュで有名な海産物であるが、これには2種類ある。カンカレーズはブロンとも呼ばれ、丸くて薄い形。ミネラル分が多い風味。クルーズは、ジャポン、ポルトゲージュとも呼ばれ、下が膨らんだ形、風味はナチュラル。クルーズ種は一時病気でだめになった時に、日本から輸入されたことがあり、ジャポンと呼ばれた。カンカルのカキは、17kmの潮の満ち引きにより鍛えられており、ちょうど川が流れ込んで塩水と淡水が混ざる場所で育っているので、特別である。カキは食材の王であり、オマールは王女である。そしてクリスマスには必ずオマールを食す。オマールの雌は胴の幅が広く、ミソが黒い。雄のミソは茶色。などなど。

研修ではそのブルターニュを代表する2つの食材を扱う。2つのグループに分かれ厨房へ。私達のグループはオマールから。バターとオマールのミソでソースを作る。別の鍋でオマールを殻ごとソテーする。殻をはずして皿に盛り、ソースをかけて完成。蒸す場合は海藻を敷いて蒸す。また、鳥かごのようなものにオマールを入れ、オーブンの中に吊して火を入れる方法もある。続いてカキの殻の開け方の講習と試食。夏場にカキを食べて平気かしらと不安になりながらも、おかわりして食べてしまう。その後敷地内にあるバター小屋に案内して頂く。近くのおばあさんから買い取ったという手作りバター機は今も現役。木の樽をぐるぐる回して撹拌して脂肪を固め、分離した水分を木の樽が吸うしくみ。その後水を入れて脂肪以外の成分を2回洗い流して完成。そして食前酒に庭でシェフ自らワインを開けて下さる。よく冷えた1996年のミュスカデ(Muscadet Sevre et Maine sur Lie, Domaine Bruno Cormerais)。

それから優雅なランチタイムが始まる。テーブルの上にはもちろん自家製のバターとゲランドの塩、ハーブとスパイスが素朴な器に入って置かれている。突き出しに木の葉型の石のお皿にのったさいころ状のさばのマリネ、ミント、生姜、パプリカ、オイル風味。楊枝がさしてある。一口で食べてしまうが、脂がのっていて上品なお味。感心しているとウエイターさんが活きたオマールをかごに入れ見せに来る。うん、おいしそう。

 
<前菜>
○貝の器に入った3つのオードブル。まとう鯛のタルタル、ムール貝のカレー風味、トマトのコンカッセ。塩を丸く固めた台に乗っている。
○かにの身をセルクルで円筒型にし、上にかにミソを載せたもの。ビネガーを効かせたかにミソのソースと、かにの甲羅のフォンに甘口ワインを入れたジュレが添えてある。
 
<メイン>
○ひめじのコトリアッド(魚の煮込み)、レモンバーム風味、付け合わせに茹でたじゃがいもとハーブ
○半身のボイルしたオマール、パクチ、カラメル、コリアンダーの風味のソース
○まとう鯛のソテー、生姜とターメリック風味のソース、蒸した縮緬きゃべつとマンゴーチャツネ
  
<チーズ>
○パヴェ・ドージュというポン・レヴェックと同じ製法のウォッシュ タバスコの香りのトマトソース、セミドライトマトと生のヘーゼルナッツ添え レーズンパンが合わせられる。
<デザート>
○ソテーしてセルクルで形つくった桃、レモングラスと生姜味のアイスクリーム、ミントの香りの桃のソース
○白いお皿の真ん中に白いレ・リボ(ブルターニュ特産のミルクの上澄み)のソルベ、まわりに真っ赤なフレーズ・デ・ボワ、フランボワーズ、ミュール。あとから赤いソースを1人1人にかけてまわるというプレゼンテーション。
○チョコレートのビスキュイとカルダモン、ジンジャー、バニラのアイスクリーム
○仕上げに、木製のスパイスケースの上にプチフール。生姜とチョコレート、野苺とレモン、カラメルとアーモンド、アニスと胡麻をゼリーで固めたもの。
 
 

白:Pouilly Fume(Serge Dagueneau et Filles)1998 / 赤:Chinon(Olga Raffault)1996

どの皿もスパイスとハーブがふんだんに使われていて、食をそそる。魚を上手く扱っているのもポイントが高い。パンは海藻の入ったもの、セーグル、カンパーニュの3種。当然まわりの人と違うものをとり、味見させてもらう。デザートにも全く手を抜いていない。今までで1番お気に入りのミッシェル・ブラにはわずかに及ばないが、堂々2位の評価。シェフの人柄も高得点の一因かも。そして、缶欲しさに特製の有塩バターのガレット(缶入り、55FF)と、瓶に入ったゲランドの塩(25FF)を購入。おみやげにバルサミコ酢のシードル版セルティックとカキの殻あけを頂く。そして表で記念撮影をしてお別れ。

バスにてサン・マロに戻って、各自で城内を散策。サン・マロは16世紀には、王からその身分を認められたコルセールと呼ばれる私掠船が活躍し、敵国の船から荷を略奪しては富を得、17世紀末にはフランスきっての港として繁栄した。海洋探検家のジャック・カルティエが新大陸を目指し、カナダの地を発見したことでも有名。堅牢な花崗岩でできた城壁の街は、第2次世界大戦中の1944年、ドイツ軍が立てこもって破壊され、城壁だけが残った。今では城壁の上は一回りできる遊歩道になっている。まずはお菓子を手に入れようと、「Ti Nevez」というクレープリーでガレット・ブルトンヌを2個20FFで、そして「Le Vieux Four」というお菓子&パン屋さんでクイニー・アマンを8FFで購入。ガトー・ブルトンというガレットを大きくしたようなものも発見。それからおみやげ物屋さんが並ぶ賑やかな通りで、誘惑と戦いながら城壁へと急ぐ。相変わらず時間がないのだ。と言いつつ、ちょっとだけ!とのぞいた店で、クレープやガレットの写真のついた便箋(20FF)や、絵はがき(3FFを2枚、5.5FFを1枚)を素早く買う。洋梨のシードルも見つけたのだが、重いからねえと買わずにいたら、後にも先にもここでしかお目にかかれなかった。やはり、旅のみやげは“見たら買い”が鉄則か。教会見物はあきらめて、城壁を4分の1周位する。外側はヨットが並び、遊歩道があるリゾート風。向こう岸から橋を渡って人がどんどんやってくる。さらに時間の許す限り、歩きまわる。「Le Comptoir」というスパイス専門店を見つけ、スパイスの本(39FF)とカード(3FFを2枚)を購入。路地にはおいしそうなパン屋さんなどがあるのだが、もうタイムリミット。ホテルに戻ってトイレを借りて、エビアン(8FF)を買って、あたふたとバスへ。この日はレンヌまで行かなければいけないのだ。車内では疲れ切ったN&Aさんは暴睡。しっかり証拠を撮らせて頂きました。その日の晩はレンヌのホテルで、イギリスから大事にかかえてきたエルダー・フラワーのワイン(アロエの香りがする)と昼間調達したお菓子達をつまんだだけで、早めに就寝。お腹と体を休める。

  


[PR]口が臭う人の共通点…:臭いが見える対策は?